「江戸しぐさ」では相手に対し、へりくだってものをいうことが前提でした。大人に向かって繰り返していうことは、してはならない失礼とされていました。返事は「ハイ」で良いのですが、「ハイ、ハイ」では人を馬鹿にしているように聞こえます。
「そんなに偉い方とは知りませんで、とんだ失礼をいたしました」は、これほど失礼な言葉はなかったそうです。偉い人でなければ失礼しても良いことになってしまいます。誰に対しても尊敬の念を持つことが大切でした。
言葉遣いにはいろいろなタブーがありましたが、会話の相手の条件により許されることもありました。たとえば相手が年下である場合は、「いい男」という呼び方をしても良かったようです。いわば、その時の状況を踏まえて、どこまでうちとけていいか判断することが重要だったようです。